起業塾[トップ] > 起業ニュース・報告書[トップ] > 平成24年度 開催報告
平成23年度 平成22年度 平成21年度 平成20年度 平成19年度 平成18年度 平成17年度 平成16年度
◇◇◇ 平成24年度 第9回「起業塾」の報告 ◇◇◇

産学官連携・共同研究イノベーションセンター
産学官連携コーディネーター 塚 田 光 芳

オプトウエア株式会社 菊地社長
群馬大学教授 伊藤
東和銀行講師4名
講義受講風景
1.はじめに
 こうありたいと思うことは、何事についても必要なことであり、この願望がなければ全てが動かない。日常の経験から、先ず思うことが希望をかなえる出発点となることを誰もが認識している。
平成24年度の起業塾も、第一日目の参加者の自己紹介において、自己が求めた信念について語って頂いた。参加者全員の思いを紹介できないのが残念であるが、以下にその声を紹介する。これにより、起業塾へ参加されたそれぞれの皆さんの願望を伺うことができ、今後の起業塾企画の参考として役立てることもできる。

Aさん:起業として、加工ガラスの工業生産化により、高品質なステンドグラスを使って新市場を開拓することを考えついた。ガラスの加工技術から始めて市場投入まで、長い事業距離になるが、これをどうやって結びつけて行くか、そのビジネスモデルができないかどうか検討したく参加した。
Bさん:群馬大学教育学部社会専攻4年である。何れ私も起業したいという想いがあった。しかし、その技術もなければノウハウもなく、何をすればよいのか、何処から手を付ければよいのか分からず、こういう機会があったので参加した。皆さんの活躍される場面を拝見して、得られるものは得ていこうと思っている。
Cさん:2年前に会社を立ち上げた。実際に事業を行ったのは1年間であり、海外の取引サポートや雑貨等の輸出入を行っている。事業ではいろいろな話があるが、なかなか上手くいかず収益に繋がるものが少ない状況である。新聞でこの機会を知り、何か学ぶことができたらという思いと、人脈構築の両面で参加した。
Dさん:新聞を見て参加した。家が安中の秋間梅林にある。そこで父の商売を引き継ぎ、梅干を加工・販売している。お客様から、こういうものを作ったらどう、ああいうものを作ったらどう、と声をかけて頂き、将来はいろいろな商品開発をしていこうと思っている。
Eさん:たまたま新聞を見て起業塾を知り参加した。前々から起業に興味があったので、このチャンスに勉強をして先のことを考えていこうと思い、時間も自由に使えるようになったので、できればなにか起業でもと思い参加した。
Fさん:私は蕎麦関連の殆どの仕事を、川上作戦、川下作戦と称して実施している。その中に、蕎麦屋の独立支援教室もあり、支援した件数は三千件程になる。蕎麦屋は約300年間、同じスタイルでやって来ている。私はそれに対して十年程かけて機械を作った。マニュアル通りやれば美味しいものができるので、これを紹介し販売していこうと考えている。蕎麦関連のノウハウもかなりあるので、それを起業に利用して行こうと思っている。
Gさん:食品関連のお茶のエキス開発、香料や食品のバルク開発等を手がけてきた。その経験を活かして、食品等の開発分野で生きようかと思い参加した。皆さんのアドバイス等を頂ければ有難いと思っている。
Hさん:大手企業を定年退職し、その後、市内の会社に再就職した。営業の仕事を始めたが、このまま終わってよいのだろうかという漠然とした思いと、何かできることがあるのではないかと考え参加した。退職前の専門業務は熟知しているが、それで何ができるかというと難しく、そこを再度考え勉強したいと思っている。
Hさん:新聞を見て参加した。商売を行うことは簡単であるが、継続することの難しさを、現在40歳になって強く感じている。起業塾は初めてであるが、創業に向けた皆さんの気持ちや動機を知りたい、一緒に時間を過ごしたいという意識が、私が参加した動機である。具体的に起業したいということではないが、人と人の関わりから、何か得られるものがあると私は信じている。
Iさん:印刷会社の二代目である。最近は、仕事等に閉塞感があり、周りへの配慮が足りなかったという反省がある。主要な取引先も群馬から移転して、経営上いろいろと考えなくてはらない。起業塾で勉強して、今後の事業を考えていくきっかけにしたいと思って参加した。
Jさん:前橋工科大学建築学科の3回生である。日本の素晴らしい技術である宮大工をはじめとする伝統技術が存続の危機にある。問題意識を持ち、伝統技術・職人を護ることのできる事業ができたら素晴らしいと思い、そのようなヒントを求め参加した。学生故、勉強するところが多いと考えるが全部を吸収していく。

 平成24年度の起業塾も、このように、自分の人生を自分の力で創造して行こうという、全員がそれぞれの願望をお互いに紹介し合うことからスタートした。(受講登録者:15名、女性3名、大学生2名、企業人 10名)。
 3班に分かれたグループは、4日間の議論を重ね、事業実現へのプロセス検討とシミュレーションを繰り返し、事業計画書を完成させて行った。以下にその完成過程を略説する。


2.グループ討議
【第1日】
Aグループ(A-G)は、宮大工技術の特徴を活かした建物を屋台村に適用し、屋台村を経営していくビジネス等を検討した。B-Gは、日本特有のサービスである、“もてなし”等を海外で活用するビジネスについて議論した。C−Gは、メンバーが製造販売している蕎麦味噌や梅干・梅ジャムを、高付加価値のある群馬県産食材として開発・販売していく事業を検討した。

【第2日】
A-Gは、メンバーが保有するステンドグラスの技術を活かして、中国の高級住宅向けのステンドグラスの販売の事業に衣替えした。中国のステンドグラス市場は、安価で粗末なものが多いことから、多少高価でも、品質の良いものを提供していく事業を考えた。加工の難しいステンドグラスであるが、メンバーが保有する特許技術を使って、ロイヤリティビジネスや、顧客が希望するデザインに沿った商品を展開する。建築業者等に直接営業を掛ける売込み方法も検討した。B−Gは、小学校低学年を対象としたレクリエーション付き英語キャンプビジネスを考えた。泊まりコースと日帰りコースに分かれ、県内のネーティブのALT教師の協力を得て、顧客に価値を提供する事業である。自然に親しみながら英語を低学年から養う必要性を感じている関心層に展開していくことを検討した。C−Gは、蕎麦味噌、梅干し、梅ジャム等の食材販売事業を、高付加価値のある群馬県の名産品の販売という設定で展開する。単なる食材販売では、他の商品との差別化が困難であるので、商品のドレスアップとして高級感のある容器等を検討し、販売計画を作成して行く。顧客は、有名百貨店、観光地等で、できればインターネット販売で注文を受け利益率の向上を図る。

【第3日】
 A-Gは、メンバーのステンドグラス加工技術ノウハウとその保有特許を活かし、NC機械加工で工業生産化したステンドグラスを特徴として中国市場に販売して行く。財務諸表はこれから再度の見直しに入る。B-Gは、親子で参加する英語キャンプのビジネスを首都圏に住む英語教育に関心の高い小学校低学年の子供を持つ両親に展開していく。大枠は決まったが、少々具体性に欠けているP/L等の数字を詰めて行く必要がある。C-Gは、高付加価値のある群馬県の名産品の販売をテーマとし、メンバーが作っている食材を原料とした商品をメインにターゲットを絞り、販路拡大を利益計画に落とし込んでいく。


3.事業計画の発表・講評
 起業塾の4日目の最終日には、それぞれ各グループの事業計画の発表を通して全員参加によるQ&Aの機会を持ち、最後に講師の講評を受けた。
 各グループの事業計画は、どれも群馬の地を元気にして行こうとする起業理念を有し、地域貢献に結びつくものであったと思う。各事業計画における新規の事業展開や新製品開発等は、頭で考える中では、これは無理ではないか、上手くいくとは思えないという意見もあったが、ここは起業塾の場である。常識に従うなら、できるものもできなくなってしまうことになる。新しいことを達成しようとするなら、初めにも述べたように、強い思いと願望を持つことが不可欠であり、起業塾ではそれを尊重しなければならない。
 今回も、グループ構成員一人ひとりが事業計画に求めるもの、こうあるべきだという思い、こうありたいとする願望の溢れた実践的な起業塾を共有することができたのではないかと考える。
 ここでは、各グループの事業計画のテーマ名を記して、第9回起業塾の報告とする。

【事業計画名】
Aグループ:ステンドグラス工房
Bグループ:英語キャンプビジネス
Cグループ:高付加価値のある群馬県の名産品の販売

Copyright (C) , Business Incubation Work Gunma University. All Rights Reserved.