群馬大学産学連携・共同研究イノベーションセンター[トップ] > センター機関紙2002 12月号
西澤国際特許事務所 代表 西澤 利夫
2002年度 地域共同研究センター 客員教授

1.自立性について

 独立行政法人への移行にともなって、国立大学には知的創造の新しい次元への対応が求められております。学術的研究とともに、技術や社会、医療への実際的展開にまで視野と行動を拡充することであります。

 ここで知的創造の新しい次元とは、知的財産権についての明確な認識とこれを踏まえての研究であります。しかしながら、新しい時代への村応は容易ではないと思われます。研究・教育についての大学の自主、自立性が求められ、資金、人材面、そして国内国外の社会との関係の全てにおいて、自立的な責任主体としてのあり様が問われるからであります。ここでの責任主体は、大学という組織体であり、またこれを構成する個々の大学人であります。

 これまでの官学主導を支えてきた学術研究、学問についての国家による「公共性」という擬制ではなく、改めて国民社会の側からその存立の意義、価値が問われる時代が来ております。社会、経済の世界大(グローバル)への拡大と苛酷な競争現実を直視し、新しい次元の「公共性」としての学問、知識、創造、そして大学を再構成していくことが必要とされます。


2.知的財産権の意義

 知的財産権は、これらからの大学、大学人にとって自らの存在と存立に係わる大変に重要な課題であります。その基本的な意義は、

1)知的財産権、つまり特許権や著作権等の権利は、知的創造を保護することによって、社会の知恵や、産業、社会を発展させるドライビングホース(駆動力)、エンジンにするとの世界共通の認識に基づいていること、
2)帰属する組織(大学、企業)の規模や名声の有無、あるいは学問、技術における権威の有無、創造者の年齢や、経歴に本質的に一切係わりのない、世界共通の、唯一とも言える公平な競争ルールである こと、
3)しかも、人や組織の協力に明瞭な根拠を与え、第三者に対しても契約関係を透明性のあるものとすること

であります。このようなことから、知的財産権には、大学、大学人の行動にとって大変におおきな社会的価値があります。知的財産権は、第三者を排除する独占的性格をもっていますことから、実際の場面では係争等で、大学人にとってはつらい思いをすることもありましょう。また、場合によると従来の権威や組織に村して破壊的な作用を及ぼすかもしれません。しかし、知的財産権を競争と協力のためのルールとする現代社会においては、果敢に現実に向うこと、そして『知的創造に係わる諸権利についての主体性をもち、しかも他者の権利を充分に尊重する』ことが肝要であります。

 また、大学にとりましては、今後、研究資金、人材、そして研究成果の取扱いの面において特定の企業等との協力関係が深まります。そして、「利益相反」の問題が顕在化します。しかし、知的財産権は大学、大学人の行動に、社会的な透明性を担保し、国民社会に対しての説明責任を示す根拠となります。


3.戦略とは何か

(1)知的財産権は、創造者の名誉とともに、研究資金の獲得とその研究への再投資という知的創造サイクルを構築するために欠かせないものとなります。この知的創造サイクルでは、大学が、知的創造の成果を知的財産権として社会への移転・普及を図ることが肝要であります。

 ここでの戦略は、つとめて主体的なものであることが理解されるべきです。たとえば

@社会への移転・普及は、特定の企業への独占的実施(使用)権の供与として行うのか、あるいは複数企業への非独占の供与として行うのか、
A実施(使用)権の供与は有償とするのか無償とするのか、
B外国企業への供与を行うのか否か、
C企業との共同研究の成果はどのように扱うのか、
D知的創造の成果の公開や教育との関係はどうあるべきか、

をはじめ、主体としての様々な選択が問われることになります。この主体的選択については、国民の税が多額の研究資金として大学に投入される以上、その理由についての説明責任が伴います。

(2)知的財産権の戦略は、そもそもどのような研究を行うのかの初発の課題としてあります。研究戦略の問題であると言えましょう。当然にも、研究では、国内外の他者の知的財産権を尊重しなければなりません。先行する特許権を追随する研究を行う場合には、何故そのような追随を行う必要があるのかが問われます。追随に意味や価値があるとするのであれば、その理由を説明すべきです。また、戦略は、研究の進展に並行して考えられるべきでもあります。

(3)大学にとっての課題の一つに、外国特許等の海外の知的財産権の確保、取得があります。新産業の創出が求められている大学に、グローバルマーケットに村応する海外知的財産権の展開のための資金とシステムの確立は急務であります。一方、大学には、地域性が戟略視点として求められております。きめの細かいコンサルテーションや共同研究への対応であります。解決すべき課題は山積みですが、大学には、強い意志で、未来に向けて、世界や地域に対して開かれた、元気のある知的創造の場に変身していくことが期待されております。
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